第5回:
これぞ「天佑」だ
2006.09.12
秋篠宮妃紀子さまの男子ご出産は、まさに「天佑」といっていい。女性天皇・女系天皇に否定的な安倍晋三氏の政権発足直前という時期である。なんとも絶妙なタイミングであった。
これによって、皇室典範改正案は棚上げになるだろう。ここはじっくりと時間をおき、改めて「新有識者会議」を編成して皇位継承の安定的システムを考え直すべきだ。
それにしても、先の有識者会議はあまりに拙速であった。内閣府や宮内庁の役人が描いたシナリオ通りに、1年間ほどで結論を出してしまった。
秋篠宮さま以来40年間、皇室に男子が誕生していないという切羽つまった事情は分かる。であるにしても、ことは世界最古の天皇の制度をどう維持していくか、男系男子による継承という歴史と伝統をどう考えるか、という「2000余年の重み」がかかる重大事である。
とてもではないが、論議が尽くされたとはいえない。この種のことを、政治的な攻防の材料にしてはいけない。報告書を出すからには、すんなりと受け入れられるような環境を想定して、結論をまとめなくてはならない。あれだけの識者を集めておいて、国論を二分するような騒ぎを起こしてしまったのは賢明とはいえない。
たしかに女性天皇は歴史上、8人おられた。だが、その子どもが即位した例、つまり女系天皇はいなかった。ということは、愛子さまが仮に天皇になられたとき、すさまじいプレッシャーに襲われるだろうということを想定できなかったのだろうか。ことは法律以前の問題である。2000年の歴史を引っくり返すかどうか、愛子さまの判断に委ねられるのだ。
ともあれ皇位継承順第3位の男子ご誕生によって、半世紀ほど議論の余裕ができたことになる。ここは仕切り直しが必要だ。
幸いにというべきか、次期首相が確定している安倍氏は、女性天皇・女系天皇に否定的である。その国家観から皇室制度の重大さを相当に意識しているであろうことは容易に想像がつく。官房長官の立場からは皇室典範改正に真っ向から反対するわけにはいかなかったのだろうが、これからは遠慮はいらないということになる。
男系男子の継承システムを維持していくためには、旧宮家の復活、旧宮家からの養子といった策があげられている。有識者会議は「血筋を一致させるには600年さかのぼらないといけない」「戦後60年間、民間人だったのだから皇室復帰によって国民の崇敬の念が起きるか」などと抵抗した。「600年」「60年」が大きな壁となったのである。
だが、これまでも200年さかのぼった例はあった。600年もさかのぼることが可能であるということは、日本がいかに安定的な天皇の制度を維持してきたか、世界に誇れる歴史の重みではないか。神秘的なまでの悠久の歴史。それが日本人のアイデンティティーを構成する大きな要素である。
「紀子さま男子ご出産」のニュースで国中が沸き立った。国際的ニュースとして世界中に発信された。米CNNの女性キャスターは「イッツ・ア・ボーイ」と笑顔で第一報を報じた。
天皇は憲法に定められた国事行為以外の政治的な言動をしてはいけないことになっている。だが、新宮さまはご誕生直後に、世界に向けて日本という国家の歴史、伝統、文化、安定度などあらゆる要素を包含した特大級の「発信」をされたのである。
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