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第6回:安倍「本格保守」政権の微妙な「あいまい戦術」'06.10.08 過去掲載分
 
 安倍政権が発足した。保守派にとっては待望久しい「本格保守」「真正保守」政権の誕生である。だが、その期待感が過剰に過ぎると、この政権は失速しかねないあやうさもはらんでいる。
 
 安倍政権に課せられた最大の目標は来年7月の参院選に勝つことである。この選挙で自民党が惨敗し、参院で自公与党が過半数割れに追い込まれると、安倍政権は10ヵ月の短命政権に終わると見られている。
 
 では、どの程度の議席が必要なのかというと、公明党が現状維持の場合、自民党は52議席獲得しなくてはならない。前回は49議席だった。3議席増やせるかどうかの攻防戦が安倍政権の命運を決める。
 
 そう難しい話でもないではないかという声もあるのだが、自民党内には橋本政権崩壊の悪夢が消えない。投票日1週間前の橋本首相(当時)の増税を示唆したかのようなテレビ発言が響いて、自民党は参院選に敗北、橋本氏は退陣に追い込まれた。ちょっとした風の吹き方ひとつで情勢は大転換してしまうのだ。
 
 総裁選を66%の得票率で圧勝した安倍氏だが、雪崩現象が起きたのは、古賀誠、二階俊博両氏ら「親中派」といわれる勢力を巻き込んだためである。これに勝ち馬に乗る議員心理が働いた。目標の7割・500票には届かなかったものの、小泉前首相が議員票では50%そこそこだったことを思えば、小泉前政権以上の安定した支持基盤に乗ったともいえる。
 
 だが、これは中曽根元首相が力説した「レフト・ウイング」を取り込んだ結果である。保守勢力の総体が増えたわけではない。そこが、安倍政権にとってのなんとも悩ましい点である。
 
 したがって安倍氏は「あいまい戦術」を取っている。靖国神社参拝も4月にひそかに行い、「行くとも言わない、行ったとも言わない」という巧みな方針で臨んだ。小泉前首相が8月15日参拝を敢行する一方で、安倍氏の去就が騒がれなかったのはこのためだ。
 
 さらに厄介なのが「村山談話」「河野談話」など歴史認識をめぐる対応だ。安倍氏の政治信条からすれば、自虐史観・謝罪優先史観は払拭したいところなのだろうが、「精神は尊重する」などとこれまた「あいまい戦術」を通している。政権の一貫性を保つには、完全に引っくり返すわけにはいかない。
 
 政治的には賢明というべきだろう。政治の世界は言論思想戦の場とは違う力学も働く。いま歴史認識をめぐる大論争を起こしてみても政治的ポイントとはならない。むしろマイナスに働く恐れがある。そういう現実的判断も政権運営の知恵ということになる。
 
 その肝心なところを保守派に分かってもらえるかどうか、保守派が当面「がまん」してくれるかどうか。そこが安倍政権の行方を左右する分岐点だ。
 
 「5年内に新憲法」を掲げ、教育再生をはじめ保守的テーマを政治課題として前面に出した安倍首相である。保守派がそうした姿勢を評価し、ある一線で踏みとどまってくれるかどうか、それとも当初の期待が裏切られたと失望感に転換してしまうのかどうか。そこの微妙な判断が安倍首相サイドには常に求められることになる。
 
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