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プロフェール
 
第23回: メディアのヒステリー症候群 2008.03.10 過去掲載分
 
 このところ、多くのメディアが陥りやすい「ヒステリー症候群」とでもいうべき事態が相次いだ。沖縄の米兵による少女暴行事件、そして、イージス艦「あたご」の漁船との衝突事故である。

 「沖縄」では駐留米軍が攻撃対象となり、「あたご」では防衛省・自衛隊の「全面悪玉論」がメディアを席巻した。こういうことが起きると、とかく日本のメディアは同じ方向を向いて、同じように吠え立てる。相手が絶対に反駁してこないことを知り抜いているから、これでもかといわんばかりに責め立てる。

 「沖縄」にしろ、「あたご」にしろ、事態の真相は「藪の中」の側面が強い。であるにもかかわらず、一方的に悪口雑言を浴びせる。これでは、メディアの進化、レベルアップはおぼつかない。

 「沖縄」では事件を起こした米兵が悪いことはいうまでもない。「あたご」についても、最新鋭最強艦が漁船を沈めてはいけない。そんなことは百も承知なのだが、この種のことは、一方が100%の責任を負うということは、一般論からしてもあり得ない。メディアにはその点への深い洞察力とたしなみがほしい。

 「沖縄」の場合、14歳少女は「強姦」の告訴を取り下げ、米兵は不起訴となった。そういってはなんだが、この事件を「反米・反基地」闘争の格好の材料として利用しようとしていた勢力は、肩透かしをくらった思いだろう。

 「強姦」は親告罪だから、告訴を引っ込めれば、立件できなくなる。というよりも、車の中での犯行ということで、警察当局は車内を徹底して調べたが、その痕跡は見つからなかったようだ。今の鑑識水準は極めて高いから、どんな微細な証拠でも見逃さない。

 結果的には、「強姦はなかった」ということなのだから、この少女にとってはよかった。周囲はあたたかく少女の将来を見守ってほしいという以外にない。

 それを前提として、やはり指摘しておかなくてはならないのは、夜の8時半に、沖縄市の繁華街で友達とアイスクリームを食べて遊んでいて、米兵の誘いでバイクに乗ってしまったという事実である。

これは「子どものしつけ」の問題だ。家庭環境が複雑だったようだが、少女の軽率な行動がなければ、事件は起きなかった。

 米軍には再発防止に全力をあげてほしいが、家庭、地域、学校など関係者には、「子どものしつけの徹底」という重い課題が投げつけられたはずである。そのことに触れたメディアはほとんど見かけなかった。

 「あたご」のケースでは、沈没した漁船の父子が行方不明になったという痛ましい事故だったが、そのことと事故原因の冷静な分析とは別問題である。

 だが、メディアは発生当初から自衛隊側を徹底して指弾した。航海長を呼んで事情聴取したことまで非難した。不祥事が起きたら、企業であれ役所であれ、当事者から事情を聞くのは当たり前のことだ。

 長い航海を終えて横須賀を目指していた「あたご」と、漁に出る漁船団がこういうかたちで遭遇したわけだが、今後の海上保安本部の捜査や海難審判の結果は予断を許さない。

 7700トンの「あたご」に対して、衝突した漁船は7トン。1000倍もの違いがある。常識的に考えても、大きな船はゆったりとまっすぐに進み、小さな船は相手をレーダーで確認できるのだから、十分な間合いを取って回避行動を取るというのが通常の姿だ。

 沈没した漁船の僚船の1隻は右左に蛇行して衝突を回避し、もう1隻は「あたご」の直前を横切った。この異常な事態をどう見るか。

 1988年、横須賀沖で潜水艦「なだしお」と遊漁船「第一富士丸」が衝突、「第一富士丸」が沈没して30人が犠牲となった事故があったが、このときもメディアは「なだしお」側を一方的に断罪した。

 だが、海難審判では双方の過失が認定され、刑事裁判でも「なだしお」艦長と「第一富士丸」船長の双方に執行猶予付きの禁固刑が下されている。

 そうしたことを考えると、メディアは「なだしお」以後、何らの教訓も生かしてはいなかったということになる。

 もっとも、政治の舞台でも、「沖縄」では米側を責め立て、「あたご」では自衛隊・防衛省を断罪する主張ばかりが目立った。野党側には「衆参ねじれ」を背景に、福田政権を追い詰めようとする政略的思惑が働いたのはいうまでもない。

 政治の世界では与野党の攻防戦が展開されているわけだから、野党が政権攻撃材料に使うのは不思議ではない。これが間違っていたら、国民の指弾を浴びることになる。

 政治のレベルがその程度である以上、メディアには一段と透徹した「目」を求めたいのである。


 
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