第27回:
保守の気概欠いた福田政権
2008.07.10
北海道洞爺湖サミットが終わって、再び「国内政局の季節」がやってきた。福田政権の存在感は一向に上向きにならない。自民党内からも「福田首相のもとで次の総選挙は戦えない」といった悲鳴に近い声が聞こえてくる。
低迷する内閣支持率はどうやら底を打ったようだ。福田首相は消費税引き上げをはじめ対決課題を回避して政権維持を果たそうとしているように見える。消費者庁の創設などが今後の「福田政治」の柱となるのだという。
福田政権はなぜ影が薄いのか。小泉、安倍両政権で「劇場型政治」を見せられてきた国民には、福田首相のなにごとにつけ慎重で地味な姿勢が物足りないのであろう。だが、それだけではなさそうだ。
自民党支持層からも「福田離れ」の空気が漂ってくるのは、福田首相に保守政権を担う政治リーダーの雰囲気が感じられないためではないか。
福田首相が「親中リベラル」の政治信条を持つことはかねてから知られていた。自民党内にはそうした思想的系譜があるのも事実で、保守からリベラルまで、小さな政府から大きな政府までを包含した融通無碍さが自民党の特質ともいえることからすると、福田首相のスタンスは理解できないものでもない。
だが、時代背景といったものを考えると、福田首相の国家観の希薄さとでもいうべき体質は、この現代にはそぐわないのかもしれない。「この国のかたち」をどういう方向に求めていくべきか、国家の針路を決すべき重大な模索が続いているという現状認識が決定的に欠けているのではないか。
福田首相は憲法改正にまったく意欲を示さない。日本版NSC(国家安全保障会議)の創設、集団的自衛権の見直しなどにもきわめて冷淡だ。あれだけの識者を集めて集団的自衛権の行使容認に踏み切るべきだという報告書を受け取りながら、いとも簡単にお蔵入りさせてしまった。拉致問題への冷たさは周知のことだ。
小泉、安倍両氏は、評価はともあれ、それぞれ志を持った方向性を打ち出し、国民に真っ向から問いかけようとした。安倍前首相は病気による無残な退陣となってしまったが、これから「安倍政治」が本格化しようと思われていた矢先であっただけに、いかにも無念な経緯であった。
その両氏と比べても、福田首相は衆参ねじれ構造という政治状況の中で、目先の課題処理に追われているだけという印象を拭えない。民主党の小沢一郎代表との間でいったんは合意した「大連立」は壮大な構想といえたが、これが破綻すると、あとは見るべきものがないとすら思える。
福田政権が追い込まれているのは、自民党政権らしさの喪失というところに最大の問題があるのではないか。ここは「逆張りの発想」が求められているように思える。なにごとにも臆病になって腰が引けた状態を続けていては、政権のイメージは確立しない。
森喜朗元首相はサミット終了後、8月上旬までに内閣改造を行うべきだとしている。現在の布陣は安倍前政権の閣僚をほとんどそのまま引き継いだ「居抜き内閣」である。首相になればだれしも「自前の内閣」を持ちたいと思うのが通例だが、福田首相はそうではないらしい。これまでも改造のチャンスはあったのだが、果敢に立ち向かおうとはしなかった。
「ヒタイの向こう傷」は問わない、むしろサムライの象徴として敬意の対象となる、というのが日本的には共感を呼ぶ。打って出る、という気概がこれから沸き起こってくるのかどうか。福田政権の命運を見極めるポイントは、そのあたりにありそうだ。
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