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評論家

宮崎 正弘 氏

<略歴>
1946年、金沢生まれ。早稲田大学英文科中退。
「日本学生新聞」編集長、雑誌「浪漫」(林房雄、檀一雄らが主宰)の企画室長を経て、貿易会社を十年間経営。国際的な人脈を広げた。
1982年、「もうひとつの資源戦争」(講談社)で論壇へ。
以後、早期に危機を警告する「日米先端特許戦争」「軍事ロボット戦」(いずれもダイアモンド社)「テロリズムと世界宗教戦争」などで注目を集め、高い予測的中率を誇る経済もの、アメリカの内幕もので注目を集めた。
1983年にカリフォルニアの「クレアモント研究所」へ短期遊学。米国、台湾などへも講演旅行をつづけ、1985年「世界青年年」ではジャマイカとヨハネスブルグ大会の日本代表を努める。
中国ウオチャーをしては1984年「中国の悲劇」が斯界の注目となり、以後、「中国、次の10年」「中国大分裂」「中華帝国の野望」「人民元大崩壊」などを矢継ぎ早に発表、そのうち数作が中国語訳となった。近作にも「中国瓦解」「日本企業は中国から撤退せよ」「出身地でわかる中国人」などがロングセラーに。とくに中国全33省を緻密に踏査し「本当は中国でなにが起きているか」(徳間書店)は、現場重視中国観察の白眉となってマスコミ、実業界に読まれた。
一方、「中国広東軍、反乱す」「中国台湾・電脳大戦」(中国語訳もでた)、「金正日の核弾頭」(徳間文庫に「拉致」と改題されて収録)など国際情勢の裏情報満載のサスペンス、金融国際戦争の核心を衝いた「謀略投機」などの小説も大きな話題となった。
学生時代からの三島由紀夫、森田必勝との交友を通じての、回想的エッセイ「三島由紀夫『以後』」(並木書房)では広く保守論壇の注目を集め、最近作「三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか」(清流出版)で文壇の資料的価値もある労作と評価された。「三島由紀夫の現場」(並木書房)は三十数年をかけて三島の主要作品の舞台を全て訪問するという前人未踏の文学的エッセイで、これでミシマ三部作となった。
<編集部注>
今回は評論家、作家として幅広い分野でご活躍中の宮崎氏に登場いただきました。
同氏のHPはhttp://miyazaki.xii.jp/です。どうぞお立ち寄り下さい。
 アフリカ資源争奪戦争  2007.07.06

 
 日本人のアフリカへのイメージは極めて悪いままである。
 
 『タイム』は「暗黒大陸アフリカは、いまや“資源大陸”もしくは“ペトロ大陸”と呼ぶべきだろう」と特集号まで出した。6月11日号の表紙はアフリカの地図が石油の炎というデザインだ。
 
 にもかかわらず日本外交はアフリカに恬淡としている。あの大陸全体で石油埋蔵はおそらくサウジを遙かに上回ると専門家は見ているというのに。
 
 さて米国議会の人権派、リベラル派、左翼らはスーダンのダルフールにおける部族虐殺を憂慮し、スーダンの独裁政権に武器援助をやめない中国を痛烈に批判している。
 
 一部の連邦議会議員は北京オリンピックのボイコットを呼びかけ、リベラル派の新聞は「北京オリンピックを"ジェノサイド競技会"と呼ぼう」と訴えている。
 
 スーダンでは中国が日量50万バーレルの石油を掘り当て、輸入を寡占している。
 
 アフリカをめぐる資源戦争は、これからが本番。
 
 現在479箇所で石油井が掘られ、開発に5億ドルが投じられた。それでもまだ3万箇所の開発可能な井戸があるという(インタナショナル・ヘラルド・トリビューン、07年5月24日)。
 
 欧米メジャーとアジアの石油企業が俄然、アフリカに目を向けたのはロシアやベネズエラに吹き荒れる資源ナショナリズムと中東の混乱のため、これらの資源リッチ地域での開発余地が奪われたからだ。
 
 東アフリカを眺めると、ケニアからマダガスカルまでが未開、未踏。調査もしていない地域が転がっており、1バーレル=70ドルの石油高騰を受けて膨大な開発費を投じても間尺に合いそうだと商業的判断がはたらく。
 
 最近、ウガンダとマダガスカルで膨大な石油埋蔵が確認され、またタンザニアとエチオピアでガス埋蔵が確認された。ソマリアからモザンビーク、セイシェルにかけて探査が進み、たとえば「ロイヤル・ダッチ・シェル」はタンザニアの自治区=ザンジバルのオフショアが比較的容易に開発可能と踏んだ。
 
 しかし港湾設備の貧弱さ、砂漠から港への輸送インフラの欠如、反政府活動や部族間の血みどろの闘争があって、これまでは本気で開発に挑む外国企業はなかった。
 
 嘗て「セブンシスターズ」と言われた欧米メジャーが目を付けたのはナイジェリア、アルジェリア、アンゴラなど少数の、輸送インフラが築きやすい国々ばかりであった。
 
 ▼東海岸は北海油田に匹敵する埋蔵
 
 アフリカ東海岸は北海油田やメキシコ湾に類する石油の宝庫になりうる。
 
 マダガスカルの石油生産は07年夏から開始される見通し。推定埋蔵量は100億バーレル。
 
 「エクソン・モービル」はウガンダに集中し、アルベルト湖近くの石油井戸からの生産を09年に開始する。
 
 コンゴではカナダの「ヘリティジ石油」と英国の「タロー石油」が軽油を生産している。後者はケニアのモンバサ港まで、内陸部のウガンダからの石油を1300キロのパイプラインを敷設するプロジェクトを検討している。投資総額は20億ドルと見積もられている。
 
 タンザニア沿海部の開発に触手を動かしているのはブラジルの国有メジャー「ペトロブラス」とノルウェイの「スタットオイル」および「アミネックス」(欧米多国籍企業)。
 
 07年三月、タンザニアで開かれたアフリカ石油開発サミットで各地の推定埋蔵地の探索調査に最も熱意を示したのは中国だった。
 
 エチオピアでは石油探査サイトで74名が反政府ゲリラに殺害された(07年4月)が、しかもそのうちの9名が中国人技術者だったにも関わらず、中国石化(シノペック)は勇躍活動している。
 
 エチオピアの現場は4兆立法フィートのガスがすでに確認済みだが、周囲には石油埋蔵もあって「ホワイトナイル社」、マレーシアの「ペトロナス」、スエェーデンの「ルンディンペトロ」などがオガデン地方での資源開発プロジェクトに参加している。
 
 ▼日本は何をしている?
 
 ここまでの状況を羅列して、気付くことがある。日本の存在がゼロに近いという愕然たる事実だ。
 
 アジア各国は沿岸から海底への開発に鎬を削っている。なかでもマレーシアのペトロナスは獅子奮迅の活躍をしており、欧米マスコミは“新メジャーのひとつ”という位置づけ、日本は関心さえない。
 
 インドネシア、マレーシア、ベトナムは自国領海の深海にも石油埋蔵を確認し、海底パイプラインを敷設しての開発競争に余念がない。ボルネオの北方、サバ州のキケでは「マーフィ石油」が02年から開発を進め、3億5000万バーレルの埋蔵を確認した。年内に生産を始める。
 
 近海のガムスト・カカプ沖合では同社と「ロイヤル・ダッチ・シェル」の共同開発。ほかにも埋もれた現場が多く、潜在的にはクエート並みの埋蔵を誇ると言われている。
 
 ベトナムはインドネシア、マレーシアに次ぐ石油生産国で沖合の海底油田から日量35万バーレル。外国からの投資が増えれば増産に結び付くとの期待が世界の石油企業から集まっている。
 
 出遅れた日本、大丈夫か。
 

 
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